2008年08月07日

『わたしと博物館』

話は、幼稚園の頃から始まる。文字がまだ読めないようなときから、私は大の恐竜好きであった。母親いわく、当時私は図鑑に描いてある恐竜の名前をほぼ全て記憶していたらしい。文字が読めるようになったとたんにその記憶力は失われたのだが、それでも小学校中学年くらいまでは恐竜大好きな生活が続いていた。その頃は大真面目に「化石の発掘を仕事にしたい」とまで考えていたほどである。

両親は、そんな私をよく上野の国立科学博物館へ連れて行ってくれた。記憶はおぼろげにしか残っていないが、ティラノザウルスを始めとしたさまざまな恐竜の化石に興奮していたように思う。今思うと、そのような頃に生の化石を目にする機会に恵まれたからこそ、ここまで私は恐竜にのめりこめたのだろう。おかげさまで、全く別の分野に進んだ今でも恐竜の化石を見るとワクワクしてくる。国立科学博物館に出会ったおかげで自分の興味を伸ばすことができたのは、幸運だったと思う。



その後、しばらく私は博物館とは縁の無い生活を送ることとなる。小学校高学年になる頃から、興味関心が恐竜から離れていってしまったのである。博物館と再会したのは、それから約10年後、専門を化学に決めた大学生時代のことだった。



私は大学で、科学好きな友人達とよく行動を共にしていた。温泉旅行へ行くと、湯で10円玉を還元して盛り上がるような連中である(外から見ると気持ち悪い大学生だったのだと思う)。そんな友人に誘われて国立科学博物館の南極展へ行くことになり、私は博物館と再会を果たしたのだ。

南極展と、あと常設展も少し見て回ったのだが、正直驚きを隠せなかった。こんなに充実した、奥が深い場所だったのかと。しっかり展示を見ればかなり勉強できる内容であり、しかも視覚的にも訴える構成になっている。地球の自転を目で見ることができる「フーコーの振り子」、運動エネルギーが熱エネルギーに変わる現象を感じられる「ジュールの実験装置」……理系の大学生になってから見るからこそ、その内容の濃さが伝わってきた。

と同時に、中学・高校時代に来ていればどれだけ良かっただろうという後悔が沸き起こった。学校で教わっている内容を視覚的に理解し、興味を伸ばし、知識を深める要素がこんなにも多くあるとは。もっと早くこの場所に来ていれば、自分の科学に対する姿勢が変わっていたのではないかと感じたのである。



私は、比較的科学には恵まれた教育環境で育つことが出来ていたと感じている。ただ一つ心残りなのが、ここで述べた、博物館の魅力にもっと早く気付けていたら、という事だ。もし自分に子供ができたら、そのような機会をきちんと作ってあげたい。私にとっての恐竜のような「きっかけ」だけではない。科学を面白く感じる手助けになるような博物館との出会いを、させてあげたいと思う。まあ、先の話ではあるのだけども。


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最近まともに時間がとれず、2週間も更新が滞ってしまっていました。
これはまずい、ということで、サイエンスコミュニケータ養成実践講座の課題であったエッセイを掲載した次第です。

なお、出来は悪いですが嘘は書いていません。
お時間ある方は、ぜひ一度国立科学博物館へお越しください(笑)


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Posted by じょきょうじゅ at 20:51│Comments(2)科学コミュニケーション
この記事へのコメント
博物館は私のような文系人間にも非常に興味深い場を提供する。
子供のころからたくさん外的影響受けたほうが、勉強も現実性を伴って力入れられたのに。教科書の科学が二次元から三次元に変わってくれたらいいなぁて思う。
Posted by 三枚貝 at 2008年08月08日 20:11
>三枚貝さん
学校での授業はどこかリアリティが無いですよね。
教科書の科学は、下手すると数式だけの一次元ですし。
それで科学を好きになれと言われても無理な気が…。
教科書以外の部分に「三次元」の科学を求めるしか無いんですかねぇ。


ちなみに、博物館の売りは「本物」だそうです。
たとえば恐竜の化石でも、目の前にある展示が本物かレプリカかで
創造力の膨らみ方が全然違う。
目の前にある化石が大昔に大地を動いていたと考えると、地球の歴史の
壮大さが実感できます。
どんなに精巧でも、レプリカだと興ざめです。

化石に関しては、どうしてもレプリカが含まれる割合は多いそうです。
でも、博物館(特に国立科学博物館)は本物志向で頑張っているんですって。
Posted by じょきょうじゅじょきょうじゅ at 2008年08月10日 20:33
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